大家志津香/ノート

Google+における不適切な投稿(ハーケンクロイツ)騒動

  • 2011年12月15日、Google+において、国際的にタブーとされている「ハーケンクロイツ」を意図するとも捉えかねない内容を投稿が問題となる。
AKBは米グーグルと提携し、同社のSNS「Google+」を活用していくという、世界戦略を発表した。開始からメンバーは次々に投稿し、他のメンバーとのやりとりなど、SNSらしいファンサービスなども行っている。しかし、あるメンバーたちの行為がにわかに話題となっている。発端は、大家が「問題です。私はいまどんな体勢で寝てるでしょう?」と投稿したことから始まった。この質問にさまざまな答えが寄せられ、メンバーの松井咲子も「卍(まんじ)」とコメント。大家は「正解者は咲子でした~」として、手でポーズを取ったのだが、実はこれが卍形ではなくハーケンクロイツでは、と話題になった。間違いに気付いた松井が「いやいや正しくはこれ」と、正しい卍の形を自ら表現し、訂正写真をアップしている。
では今回問題になった「ハーケンクロイツ(逆さ鉤十字)」とは何なのか。これは、まんじと同起源で、右鉤。すなわち、卍とは逆になっているマーク。この印は、1919年以来、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の党旗に、35~45年にはドイツの国旗にも用いられたことで有名なマーク。ナチスは1939年にポーランドへ侵攻し、それがキッカケとなり第二次世界大戦が勃発。また、大戦中にはユダヤ人を大量虐殺しており、欧米諸国では「ナチス」や、その象徴である「ハーケンクロイツ」を未だにタブー視する傾向が強い。実は、以前にもロックバンド・氣志團が軍服を模した衣装にハーケンクロイツが付いた腕章を付けテレビに出演し、ユダヤ人人権団体からクレームを受け、謝罪する騒動になった事もあった。番組側も再放送の予定を中止し、ウェブサイト上での放送告知や写真の記事を削除した。また、人気ゲームである『ポケットモンスター』のカードゲーム版でも、ハーケンクロイツに見える描写があり、ユダヤ人団体からクレームが付けられ、デザインを変更したこともある。
ではなぜ今回、この様な問題が起こってしまったのか。それは、「Google+」がスタッフによるチェック(検閲)を受けていないため。通常、芸能人のブログというのは、投稿内容によって何か問題が起きない無いように、不適切発言やNG項目に抵触していないか、きちんとチェックしてから掲載される。AKBも大抵の事務所はブログをチェックしているが、実はこのチェックという作業は大変で、事務所によっては1日何件という投稿制限がある場合もある。しかし「Google+」に関しては、開始時に運営側が「メンバーの投稿内容はチェックしない」ことを明言している。秋元康「私も正直どうなるか分からない。メンバーの発言は、どこかで大人がチェックするものだったが、今後はメンバーを信じてやってみます。言葉足らずだったり、誤解されることもリアルなこと。心配はあるが、親として独り立ちさせたい」[1]
現在AKBは、利用規約に抵触する13歳未満以外の姉妹グループを含む100人以上のメンバーが「Google+」を利用しており、投稿される記事や、他のメンバーの記事に対するコメントなどは膨大な数に上る。すべてをチェックすることは非常に困難であるが、チェックが無いぶん、タイムラグがなくやり取りにリアルタイム感があること、深夜であっても更新されるなど(ブログやモバメは時間指定もある)、ファンにとっては嬉しい一面もある。
今回の件は、何らか意図があってのものではなく、ただの間違いだと思われ、大きな騒動になることも無いと思われる。しかしAKBはこれまでにも、ブログやモバメ、ツイッターなどのツールを使用して、騒動となるような問題がたびたび起きており、「Google+」だけ起きないという保証はどこにもない。だがそれを承知で運営側は、メンバーに任せるという選択肢を選んだ。「JKT48」や「TPE48」など、海外姉妹グループも増えつつあるAKB48グループ。それに伴い、海外公演の数も「交流」という形で増えることも考えられ、グローバル化を進めるには「Google+」は欠かせないツールになる可能性があるが、迂闊なことをしてしまうと、海外規模の大問題に発展してしまう危険性も孕んでいるという諸刃の剣でもある。[2]

脚注・出典